高血圧
一昔前までは140/90~160/95mmHgを境界型高血圧、160/95mmHg以上を高血圧と呼んでいましたが、現在では境界型という区分がなくなり、140/90mmHg以上の方を一律に高血圧症と診断するようになっています。
さらに最近では140/90mmHg以下の正常血圧の中でも130/85mmHg以上を正常高値と呼び、血圧はそれ以下にコントロールすることが望ましいとされています。
このように高血圧症の基準がより厳しくなった背景には、幾つかの大規模な調査において、血圧が高ければ高いほど脳卒中や心筋梗塞などの心血管合併症をきたすリスクが増加し、血圧をより低く治療することによってこれらの心血管合併症をよりよく予防することがわかってきたからです。
ところで、日本人の高血圧患者さんの90%以上は本態性高血圧(明らかな原因がなく、生まれながらの体質が原因と考えられている)であって、個人差はありますが、若い頃には血圧が正常であっても中年期以降、徐々に血圧が上昇してくるタイプです。
このような高血圧患者さんでは、血圧が高くなることによる自覚症状はほとんどなく、逆に立ちくらみなどの症状で悩むことの多い低血圧症の方に比べると日頃から元気がいいくらいです。
しかし、その間にも脳や心臓の血管の動脈硬化が知らないうちに進展し、ある日突然脳卒中や心筋梗塞をきたすことになるのです。そして、これら疾病には前兆のないことの方が多く、重症の場合には生命を脅かし、たとえ助かったとしてもその後様々な後遺症に苦しむことにもなります。
このような特徴から高血圧症は、“silent killer(静かなる殺人者)”とも呼ばれています。
このシリーズでは何回かにわたって、高血圧症の一般的な事柄や治療方針、また日常生活における2、3の注意点などについて解説したいと思っています。
文責 副院長 阪本
- 2016.12.13
- 高血圧について